剣と盾 第6話


最初は, 信じなかった。
あんな素晴らしい策が失敗するはずがない。
確かに、日本全土は無理だが、部分的にでも戻ってくるのだし、差別のない理想の世界を、平和な世界を壊そうとする人などいないと思った。 傍観者のような思考を持つC.C.の意見も聞きたくて、同じ問いをしたところ、小馬鹿にするように笑われた。ルルーシュとは多少違ったが、それでもやはり特区は失敗し、日本人を名乗ったものはより辛い目に遭うと言った。

「ブリタニア人にとって、イレブンは野蛮で無能な人種だ。そんな人間と平等になりたいなて奇特な人間がどれほどいる。そもそも、イレブンは日本人として日本人と暮らしたいんじゃないのか?自分達を差別し続けたブリタニア人と、なかよく暮らしたいなんて思うか?」

対等の立場になれば、今までの恨みを張らそうとするのでは?となれば、対立…いや、派閥のようなものができ、日本人とブリタニア人が争うのではないか?ここは日本だから出ていけと、追い出すのではない か?

いろいろな負の感情を言葉で示され、動揺した。
言われてみればと思う気持ちと、彼女の願いがそんな風になるはずがない。迫害を、差別を拒絶するからこそ、皆にとって平等な世界である行政特区に参加するはずだ。という気持ちがせめぎあった。
シュナイゼルがこちらに落ちたとき、この話をぶつけ、そこではじめて二人の予想が当たっていのだと、自分は、考えが足りていなかったにだと知った。

行政特区は黒の騎士だけではなく、ユーフェミアをも滅ぼす諸刃の剣。 ルルーシュやシュナイゼルクラスの策士がいてはじめて成立するレベルの夢物語で、ルルーシュとシュナイゼルからみれば、維持するメリットよりデメリットが大きすぎて、かかわりたくはない政策なのだ。
でも、ユーフェミアにはそれらのデメリットは見えていない。いや、問題はあると思っても、さほど大きなものと思っていないのか、あるいはゼロであるルルーシュが協力してくれるならなんとかなると考えていたのか。実際、ユーフェミアと二人きりで話をしたとき…あの惨劇の日、ルルーシュはその未来をわずかの間だが思いめぐらせたという。協力するならば、何をどうすれば問題を最小限にできるか。黒の騎士団は民衆を守るための、いわば自警団あるいは独自の軍隊のような位置に置くことで、解体せず残すことは可能ではないかと考えた。その結論を導くには、ギアスを含めたあらゆる手段を用いることになる。独自の自治、独自の法、それらすべてをブリタニアに認めさせる。ギアスがあれば簡単だろうと思うのだが、ギアスはそこまで万能ではないという。永続するかどうか不確定。相手がどこまで指示に従うかも不確定。上のものが入れ替われば、すべてやり直しになる。
それは、ゼロであるルルーシュが力と知力と権力…この場合は発言力だろうか。それらを維持し続けることが前提で、もし、黒の騎士団は不要だとされれば終わるし、特区外のイレブンからの指示を失っても終わる。もちろん、ゼロが死んだり、加齢などで思考や判断力を鈍らせても終わりだ。
ブリタニアもそれはわかっている。ユーフェミアとゼロがいる間だけの治世では意味がない。行政特区に参加しても、ルルーシュブリタニアを倒す道を諦めず、行政特区を維持しつつ、反ブリタニア勢力としてまずはエリア11を落とさなければならない。どう考えても不可能としか思えない道を歩むことになる。悪逆皇帝になるよりもずっと難しい、蕀の道。
ルルーシュは、ほぼ不可能な道のりだと言った。
シュナイゼルにも聞いたが、こちらは不可能だと断言した。
そんなことにも気づかない都合のいい道化の人形。
ブリタニアを相手にするには、裏の裏をかく狡猾さが足りなかった。先見の明も無く、最悪の事態を想定し、その解決方法を考えなければいけないことさえ理解していなかった。未熟すぎたのだ、すべての面において。
日本人から名誉になり、人間の醜い面を見てきたスザクがそれを進言すべきだった。だが、美しい姫君はブリタニアでも絶大な力を持っている。だれもそれを邪魔できないのだと・・・なぜか盲信していた。そのことにシュナイゼルは驚いていた。
行政特区をもし成功させるなら、
ルルーシュが正体不明のゼロであること。黒の騎士団が正義の味方として民衆の心を動かし続けること。間違っても、日本を否定する敵と思われてはいけないこと。それらをどうにかすることができたとしても、行政特区は数ヵ月と持たずに崩壊し、反ブリタニア勢力は力を失いゼロは失墜する。多少抗えても、それだけだ。維持し続けることは不可能。例え、ルルーシュでも。ただ、ゼロは奇跡を起こすから、不可能をひっくり返せないとは言い切れない。いや、ルルーシュは奇跡を起こすつもりだった。
ギアスを知り、その能力も理解した上でも不可能なのだから、ゼロレクイエムのような命を懸けた策で挑むしかないのだろう。たったひとりで。

そんな奇跡に頼るのは、正しい道だと思わない。
だから、そうならないように。
行政特区とは別の方法で、自分が、あの未来につながる道を切り開く。

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